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2019年の出生数が推計で初の90万人割れに
年の瀬も押し詰まった昨年12月27日のこと、テレビや新聞で報じられたのが、厚生労働省発表の2019年における出生数についてのニュースです。
厚労省によると、1899年(明治32年)に統計を取り始めて以来、年間の出生数が初めて90万人を割るという推計になったということです。
推計によると、2019年の出生数は86万4000人になる見込みで、少子化がいっそう加速しているとしています。
人口の現象は将来的な国力の衰退につながりかねず、「国難」という厳しい言葉を使って危機感を訴えるマスコミ報道もありました。
少子化の要因はひとつだけではなく、様々な原因が絡み合っています。
たとえば80年代以降の少子化要因として内閣府があげているのが、非婚化、晩婚化、晩産化です。
その背景にあるのが、女性の社会進出や価値観の多様化があります。
また、女性の社会進出が進む一方で、子育て支援体制が不十分であることも指摘されてきました。
しかし、少子化問題はここ最近になって浮上してきたものではありません。
30年前の1990年の頃からすでに少子化対策は喫緊の課題として捉えられてきたはずです。
それなのに30年経っても子育て支援体制が整備されないばかりか、ますます少子化傾向に拍車がかかっているのが現状なのです。
少子化問題の原因を正しく理解できていないコメントに失望
ニュースなどを通して、少子化問題に関する政治家や専門家といわれるひとたちのコメントや解説を聞いていると、たびたび不快な思いになることがあります。
すべてがすべてというわけではありませんが、たとえば数年前から取りざたされるようになった待機児童問題といった、社会環境や制度の不備についての論調であればある程度は納得できますし、同意することもできます。
ところが、問題の本質があやふやになり、いまさらながらに「女性が子供を産まなくなったから」といった、短絡的というより現状認識のまるでなっていない的外れなコメントをいまだに耳にすることがあるからです。
たとえば、不妊に悩む夫婦がどれだけいるのか理解しているのかと思ってしまいます。
ただし、誤解のないように念のため申し添えておきますが、不妊症が少子化の一因というのではありません。
不妊症の治療に関する正確なデータがないためはっきりとはわかりませんが、関係官庁や研究機関などの報告によると、夫婦の約3組に1組は自分たちが不妊ではないかと心配したことがあり、約6組に1組は実際に不妊症の検査や治療を受けたことがあるといわれています。
しかも、その割合は増加傾向にあるとされているのです。
こうした現状があるというのに、女性が云々という批評には閉口するしかありません。
少子化問題は女性だけの問題ではないのです。夫婦だけの問題でもありません。改めて国全体の問題として捉え、適切な対策を早急に講じなければならない重要課題なのです。
不妊治療は金銭的な負担から断念も
少子化問題はさておき、不妊治療は日進月歩で進化しているといわれています。
再生医療の一つである、患者本人の多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma)を用いた「PRP療法」などがその最先端といったところでしょうか。
しかし、新しい治療法が確立されても実施している医療機関は限られますし、そもそもそうした情報自体が一般には広く伝わっていないという現状があります。
また、なによりも費用の負担が心配されます。
体外受精などの不妊治療には助成金制度がありますが、いくら最先端の治療法が確立されたとしても、金銭的な負担から断念しなければならないケースも少なくないようです。
こうした課題が少子化問題と関連するとはいえませんが、子供を育てる環境や支援制度がそうであるように、社会のあり方や対応が後手後手にまわっているような気がしてなりません。