子宝相談を受けていますと、様々な婦人科疾患がありお悩みの方がおられます。
またそれが不妊の原因となることもよくあります。
そこでよくある婦人科疾患の中で特に子宝に恵まれたい方に関係する「卵巣の病気」についてまとめてみました。
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そもそも「卵巣」という臓器とは?
卵巣は左右に2つあり、子宮の両側に伸びた卵管の下にぶら下がっています。
親指の頭ほどの楕円形をした小さな臓器です。灰白色で表面がでこぼこしています。
卵巣からは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2つの女性ホルモンが分泌されます。
このホルモンは、生理のリズムを整えて、妊娠をつかさどる大事な役割を持っています。
また赤ちゃんのもとになる卵子をつくる大切な働きがあります。
卵巣の中には、女性が産まれる前から約700万個の原始卵胞が存在していて、思春期を迎え初潮が始まると毎月この原始卵胞のいくつかが脳下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)の指令を受けて、卵胞へと発育し、卵胞ホルモン(E2:エストラジオール)が分泌されます。
そしてこの内の1個が成熟卵胞となり、そこから卵子が飛び出します。これが「排卵」です。
また排卵後、卵巣に残された抜け殻が黄体に変わり、黄体ホルモンを分泌するようになります。
妊娠しなければ、黄体はやがて白体に変わり、黄体ホルモンの分泌は一気に減ります。
卵巣から分泌される2つの女性ホルモンは、子宮内膜を増殖したり、分泌物を増やすなどして妊娠成立の大きな助けとなります。
卵巣の働きは女性が妊娠し、新しい生命を生み出すのに不可欠な臓器なのです。
卵巣機能のトラブル
卵巣から分泌される女性ホルモンは、脳の視床下部と脳下垂体によってコントロールされています。
しかし視床下部は、自律神経の中枢でもあるため、ストレスなどでダメージを受けやすく、女性ホルモンのバランスを崩してしまいます。
また必要以上の過度なダイエットや肥満、身体の冷え、睡眠不足、甲状腺機能異常など様々な原因から「無排卵」になる可能性があり、卵巣の働きにダメージを与えます。(卵巣機能不全)
卵巣腫瘍
卵巣には膨大な数の原始卵胞があり、周期的に発育・変化を繰り返しています。その一方で女性ホルモンを産生しています。
女性の身体の中でこれだけめまぐるしく変化し、デリケートな臓器は他にありません。
そのため卵巣には腫瘍ができやすい臓器の一つです。
ただし腫瘍といっても種類は様々で良性のものも悪性のものもあります。
卵巣チョコレート嚢腫
卵巣にできるものの、正確には子宮内膜症の一種で卵巣の組織からできる腫瘍とは別のものです。
卵管・卵巣・骨盤腹膜などに発生したものを一般的な子宮内膜症と呼びます。
このなかでも卵巣内に発生する古い血液が溜まってチョコレートのような嚢腫ができるのを「卵巣チョコレート嚢腫」と呼ばれます。
子宮内膜症の内、最も発生頻度が高く、7割の方に見られます。
特に卵巣チョコレート嚢腫は、卵胞の成長を妨げたり、癒着が卵管や周囲に広がって受精の妨げになったりで不妊の原因になることが多いです。
卵巣嚢腫
卵巣腫瘍の8割を占め、さわるとぶよぶよしていて多くは良性です。卵巣内の卵胞に水などがたまります。3つのタイプに分かれます。
皮様嚢腫(ひようのうしゅ)
髪の毛や歯、骨、皮脂分泌物などが入っている腫瘍。
卵子のもとである胚細胞が変化し、成長ホルモンによって成長してしまったもの。
ほとんどが良性で大きさは15~16cmくらいまで。
全卵巣腫瘍の15%を占めます。20代~40代に多く見られます。
茎捻転を起こすと激しい痛みやショック症状が起こります。
漿液性嚢腫(しょうえきせいのうしゅ)
透明で黄褐色のサラサラの液体がたまるタイプ。
大きさは様々でこぶし大から数kgに及ぶ巨大なものまであります。
全卵巣腫瘍の30%を占めます。
10代~30代に多く見られます。
ほとんどが良性なので心配ないですが、
直径10cm以上になると茎捻転を起こすおそれがあるので注意が必要です。
偽粘液性嚢腫(ぎねんえきせいのうしゅ)
ネバネバした粘液のような黄紅色の液体がたまるタイプ。
大きさは親指大から大人の頭大まで様々で全卵巣腫瘍の20%を占めます。
良性と悪性があり、悪性が大きくなると要注意。
充実性腫瘍
卵巣の細胞組織にできた、さわるとコブのようにやや硬い腫瘍。
全卵巣腫瘍の10%にあたり、40代以降の女性によく見られます。
良性と悪性とあり、さらにその中間の中間型のものもあります。
また良性や中間型から悪性に移行する場合もあります。
卵巣嚢腫と同じように、小さいうちは自覚症状がありませんが、こぶし大以上になると、おなかに硬いしこりが触れたり、下腹部痛などの自覚症状があらわれます。
卵巣がん
卵巣にできた腫瘍のうち悪性のものを卵巣がんと言います。
充実性腫瘍だけでなく、良性の漿液性嚢腫や偽粘液性嚢腫から悪性に変化する場合もあります。全ての卵巣腫瘍は、
癌に移行する可能性を持っています。
未婚の女性、妊娠・出産の経験のない女性に発生率が高いと言われています。
また食生活の変化で動物性脂肪やたんぱく質の摂取とも関係があるとも言われます。
初期には自覚症状がないうえに、卵巣がんは転移が早いため、何よりも早期発見が大切です。
様々な卵巣の病気について紹介しましたが、「子宝」を望む方にとって卵巣機能のトラブルは、不妊の大きな原因の一つです。
それは、生活習慣、食生活の内容、心理的なストレス、過度なダイエット、肥満、睡眠不足などが原因で起こると考えられています。
つまり日々の生活の習慣から卵巣機能を衰えさせる原因を作ってしまうことがあるのです。生理のリズムや経血の量、おりものなどの変化がサインとなります。
日ごろから注意してみることが大切です。卵巣の病気、卵巣機能のトラブルなどもホルモンバランスが大事と考えられます。